9月7日 ゴールの予感
私の記憶では彼が得点をあげたシーンに覚えが無い。
何度と無くそのチャンスは有ったにせよ、わずかその数秒後には本人以下全員が頭を抱える羽目になる。
一番ゴールに近いポジションに位置している彼は、実は一番ゴールから遠い男なのである。
それでもFWで使い続けているには訳がある。
夏の遠征ではこんなことがあった。
その試合は、3日目の最終日にふさわしく効果的な試合運びで10点差以上の展開になっていた。
ただ彼の得点は今遠征中、未だにゼロ。
後半も残りわずか、ボールを動かすごと、突破するごとにゴールに迫ることが出来ていた彼らに変化が起きる。
「彼にゴールを!」チームの雰囲気は彼の得点を演出する方向に動き出したのである。
そしてそのチャンスはすぐに作られた。
Yariが左サイドを突破し、GKとの一対一。もちろんシュートは打たない。
送られたパスはご丁寧にGKまでも外したエンジェルパス。
「どうぞお決め下さい」宅急便より時間も場所も正確な完璧なお届けモノだった。
あとは2メートル先の無人のゴールへ流し入れるだけの簡単な作業。
ベンチにいる我々も立ち上がった。
歓喜の瞬間がやってくる。
数秒後、頭を全員が抱えた。
どうすればあそこから外せるのだろう。
みんながそう疑問に思っただろう。
彼がシュートを決めないことには帰れない。
もう何が何でも決めてもらおう。
迫り来るタイムアップの時間に我々は必死になった。
早く彼にもう一度決定的なチャンスを!
攻め続けた。
そして、最後のチャンスが訪れた。
先ほどと同じ左サイドを、今度は1年生のOnigiriが同じように突破しGKとの一対一に。
彼のポジショニングも最高だ。次は大丈夫だろう。
もうすぐ歓喜が・・・。頼むぞ!
選手・ベンチ全員がその瞬間を待っていた。
次の瞬間、大きなガッツポーズだった。
みんな頭を抱えた。
「なぜシュートを選択したのか」
そして試合終了のホイッスル。
ガッツポーズまでしたOnigiriの非情さは彼への痛烈なメッセージなのかもしれない。
「決めたきゃ自分で決めろ!」「そんな選手になれ!」
あの日から彼がどの位ゴールに近づいたのかは、今週末の試合で見えてくるはずだ。
使い続けている「訳」が見せられることを私は確信している。